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​3冊目の本

次刊は『文盲から文明へ』(仮)。

筆者の思沁夫(スチンフ)は内モンゴルの遊牧民として生まれ、14歳まで文字を知らないまま平穏に過ごしていた。しかし、時は「文化大革命」。青春期を迎えるころには、「文明」へと苛烈に「巻き込まれて」いった。

そのなかで「文字」と出会い、本の世界に没入した筆者は、類まれな才覚を発揮する。革命が終わり日本に留学したのちには、人類学者として国立大学で教鞭をとるにまでになった。

人類学とは、他者を観察し、自らを省みる学問である。では、人類学者となった筆者は今、「あのころ」(自分自身であり、「他者」的でもある)をどのように描写できるだろうか。本書は、文盲から「文明」へ、また、文明から「文盲(あのころ)」へと往還しながら、幼少期の遊牧民時代から現在までの人生を描く回顧録である。

しかして、「あのころ」確からしいものとしてあった記憶や身体感覚は、言葉に変換した途端に、たちまちたち消えてしまう。そして、言葉をすり抜けてしまうこれらの記憶に戸惑い、煩悶し、それでも文字に起こそうと努めるなかで、頭をもたげる一つの問い。「自らの記憶すら描けないのに、他の文化を描くことなど可能なのか」。筆者が、控えめに、自省的に、記憶を辿るとき、この問いは常につきまとう。かつて筆者の人生を明るく照らした「文明/文字」こそが、かえって「あのころ」を見えなくさせているのではないか。文字は、記憶に陰を落とす道具のようだ。文字への、言葉への、文明への拭いきれない懐疑。一方で、「本書を書く」途上で、取り戻される「あのころ」のカケラ。

本書は、一般の回顧録や自分史とは一線を画すものたりえるだろう。この、一人の人類学者の歩みそのものが、そのまま、「人類学的記述」とは何かを問い直すカウンターとなるからだ。

出版予定日/2024年8月

​販売価格/(未定)

​4冊目の本

『風と人類学』(仮)。

人類学者の調査地における「風」の概念を、世界のさまざまなフィールドから描く人類学的エッセイ集。インドタール砂漠のトライブ、タイ山地民のムラブリ、アメリカ先住民のナバホなど、若手人類学者が調査したフィールドで遭遇した「風」とはどんなものなのか。

「風」という普遍的な自然現象から、民族知や人類学知に触れるための入門書。

出版予定日/2025年1月

​販売価格/3000円(予定)

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